ぼくは、ズボンの下で居心地悪そうにしているオチンチンを押さえて、もじもじしていた。
ちらちらと、キャノピー越しに見える、キエルお嬢さんのお尻が、ホワイト・ドールの歩みに合わせて規則的に揺れる。
キエルお嬢さんは、多分着やせするタイプだ。以前、水浴びの様子を見る機会があって、ぼくはそれとなしに見てしまったのだけど、ソシエお嬢さんと同じくらい、華奢な体をしているのに、胸とか、細い腰に続くお尻が、較べられないくらい豊かに発達している。
こういう事を言うとソシエお嬢さんは怒るかもしれないけど、あまり似ていない姉妹だ。
ぼくは、どちらかと言えばキエルお嬢さんに惹かれるし、他の男の人だって多分そうだと思う。グエン様がキエルお嬢さんを近くに置きながら、何もしていないって言うのは、何故だか分からないけど。
正直、キエルお嬢さんといっしょに行動できるようになって、ぼくは天にも昇る心地だった。憧れの人と、一緒に時を過ごす事ができる。キエルお嬢さんは、何故だか、イングレッサが堕ちたころから凄く優しくなっていて、ぼくによくしてくれる。
一度、ウィル・ゲイムさんという人と出会った事があって、そのときばかりはキエルお嬢さんの様子がおかしくなってしまった。ぼくは凄く心配したけれど、お嬢さんがおとぎ話の現実になったのに感激していたのだと知れば、平静でいることができた。
なんだか、この頃は使用人と主人と言う仲が近づいているような気がするし、だんだん、その、キエルお嬢さんはディアナ様に似てきたように思う。
そうであることは、ぼくにとっても凄く嬉しい事だったし、こうしてお嬢さんといられる事は、ほんの一時の事とはいえ至福の時間だった。
「ロラァン! 見て下さい、あんなに家が小さく見えます!」
無邪気な声を挙げながら、お嬢さんがぼくに振り返る。
スラスター・ベーンからナノスキンのかすが取り除かれたホワイト・ドールは、一跳びでとんでもない距離をジャンプする事ができた。
シドじいさん達とはぐれてしまうかもしれないと思っても、お嬢さんが提案した短い空の旅は魅力的で、ぼくは逆らう事ができなかった。
「ええ、よく見えますね! もう少し高く飛ぶ事ができたら、海まで見えてしまいそうですよ!」
「本当!? ロラン、わたくし、海が見てみたいわ」
お嬢さんが、ぼくの言葉に反応してはしゃぐ。なんだか、海を見た事が無いみたいな様子だ。多分そんなことは無いだろうけど。
「すみません、ちょっと無理みたいです。先日のスモーとのクロスコンバットで、ホワイト・ドールのセンサーがいかれてしまったみたいで……。だんだん直ってきているみたいなんですけど、まだ高高度跳躍時の着地座標の算出が曖昧で……あ、つまり、高く飛びすぎると着地が難しいって言う事なんですが」
難しい言い回しになってしまったと思い、ぼくは平易な表現に改める。
お嬢さんは、慌ててぼくが言いなおしたのを見て、くすくす笑った。
「わかっていますよ、ロラン。ごめんなさいね。わがまま言って」
「い、いいえ! とんでもないです!」
ぼくの声が裏返る。
……だめだ。ぼくはとても、キエルお嬢さんと向かい合って、対等に喋る事なんてできそうに無い。否応無く、あの方とイメージが被ってしまうし……。
キエルお嬢さんに対して、劣情を抱いた事が無いといったら嘘になる。現に、何度もお嬢さんを思って自分を慰めた。でも、ぼくにとって一番問題なのは、キエルお嬢さんがディアナ様に似すぎてるって事で……。
月の男達は、誰しも必ず、ディアナ様に恋をする。その思いが諦めきれずに、高みを目指して努力した者の集まりが親衛隊だと言う噂もあるくらいだ。
ぼくだって、キースだってディアナ様の事が好きだった。
だけど、キエルお嬢さんを現に目の前にして、ディアナ様を懸想するのは気がとがめる。
豊かな金髪が、風になぶられて広がる。髪を押さえる手元は、いやに白く、目に焼き付く。
……キエルお嬢さんって、確かに色白だったけど、あんなに白かったかな……。
黄色みがかったキャノピー越しだから、色が違って見えるのかもしれない。
「うん? ……どうしたの、ロラン? じっとわたしを見て……」
……気付かれた!
じっと、キエルお嬢さんのお尻を見てたことも、気付かれてるかもしれない。
ぼくは、顔が熱くなるのを感じる。
「ちっ、違いますよ! お嬢さんがあんまり身を乗り出すから、落ちないように見てたんです」
我ながら苦しい言い訳。でも、お嬢さんは納得してくれた気がする。
ハイライトの少ない青い瞳が、キャノピーの向こうからぼくを見つめている。
なんだか、赤面したぼくの顔色が見透かされてしまいそうな気がして、ぼくはぎゅっと目を閉じた。
「VRメット!」
ぼくが一声叫ぶと、チェアの背もたれから、黒いドームが展開した。まだ頭部が損壊しているせいか、網膜に転写される映像がぶれている気がする。
でも、キエルお嬢さんの目から、見られたくない表情を覆い隠すには丁度よかった。
ところが、この時VRメットを展開したことを、ぼくは後々悔やむ事になる。
VRメットは、使用者であるぼくの目線を追い、対象をズーム、解析する事ができる。
当然、この時ぼくの目はキエルお嬢さんの綺麗なラインを描くお尻に注がれていた。
本当に、内心でさっきまで反省しかけていたと言うのに、ぼくはもう、性的な欲求をキエルお嬢さんにぶつけているのだ。
その瞬間、視界が赤く点滅した。
網膜に映ったディスプレイの中で、キエルお嬢さんのお尻が選択され、ズーム。ホワイト・ドールのメイン・コンピュータが、対象の解析を開始したのだ。
「きゃあぁ!!」
キエルお嬢さんが悲鳴をあげた。
お嬢さんを支えていた、ホワイト・ドールの掌が、その表面を遊離させたのだ。
まるで、ナノスキンのかすのように浮き上がると、装甲の表皮は縒り合わさって、細長い蛇のようなものを形作った。
その先端が、ぼくの見覚えがある形をしていて、はっとする。
「キ、キエルお嬢さんッ!?」
チェアから起き上がろうとして、VRメットにしたたかに頭を打ち付けた。
ガンガンと頭が痛むのを堪えつつ、ぼくは自問自答した。
……ホワイト・ドールに、搭乗者の意思を感じ取るシステムがあるなんて、聞いてないぞ!? サイ・コミュニケーターとでも言うの!?
ぼくが混乱しているまに、状況は進展してしまっていた。
蛇のようなホワイト・ドールの端末は、他にも何本かが持ち上がり、キエルお嬢さんの体を拘束していく。逃げ場なんてあるはずが無い。ここは、飛行船が到達できる高さよりも高い、空の上なのだ。
まるで、頭足類の触腕みたいに、端末はキエルお嬢さんの全身を這い回る。先端がお嬢さんのスカートを擦るたび、ぼくの体にも触感が走る。多分、VRメットを通じてぼくの中枢神経に、アクセスされているのだろう。
それは、凄くまずい事だった。ズボンの下で、ぼくのそれが固くなるのが分かる。むず痒いような感覚が広がっていく。
「はぁはぁ、ディアナ様……!」
ぼくはコンソールのグリップを握り締めながら、想い人の名前を呟いた。網膜に映る光景が、キエルお嬢さんでは無く、ディアナ様の姿に見えてくる。ぼくの頭が、霧がかかったようにぼうっとなって、夢想の中に意識が沈んでいく………。
「あぁぁぁ! いけません、そこはッ! そこはぁぁッ!!」
ディアナ様の声が切羽詰る。
長いスカートに侵入した端末が、下着に押し包まれた秘めやかな箇所をなぞり上げたのだろう。
信じられない事に、ぼくはそこに確かな湿り気を感じた。
「ディアナ様……そんな……濡れておられるなんて……!」
押し当てられた端末が、強く食い込んだ。
「ふあああああああああっっっ!!」
天を仰いで、ディアナ様が叫んだ。帽子がずり落ち、風に流されて飛んでいく。
「ディアナ様、ディアナ様、ディアナ様ァァァァァッ!!」
ぼくは、もう限界だった。この手で、この方を壊してしまいたい。めちゃくちゃにしてしまいたい。そうしなければ、ぼくが駄目になってしまう。それほどまでに、ディアナ様がいとおしい。
端末が幾本も、ディアナ様の襟元に入り込む。無理やり潜り込むようで、その先端はシルクを思わせる布地を分解し、ぼろぼろの布きれに変えていく。
引き裂く音と共に、ディアナ様の眩しい胸元が顕わになった。相当なボリュームを持った一対の肉が、戒めから解き放たれて激しく揺れる。
「いやっ、そんな、だめ………!」
吹き荒ぶ風に消え入りそうなディアナ様の声。でも、どんなに恥ずかしがっても胸元を隠させはしない。巻きついた端末が、ディアナ様の腕をきつく固めているから。
端末が、胸の谷間に押し入った。月の六倍もある重力に逆らって、ソレイユの白さを思わせる曲面が張り出している。その頂点に、信じられないほど理想的な比率で、桃色の突起が鎮座ましましていた。
尖って、いる。
端末が、その先を枝分かれさせ、探るようにディアナ様の、愛らしい乳首に巻きついた。そして、全身を乳房全体に押し付けながら、激しくのたうち始めた。
「あぅ! そんな、そんなの、きついィッ! 締め付けて……はぁっ、はぁぁっ、あばれて、ますぅぅッ!」
びくびくと、ディアナ様が剥き出しになった上半身を痙攣させる。
ぼくは、無意識に舌を伸ばして…………端末が、ぼくの口を模して大きく展開した。そして、より細い端末に締め上げられて、白く鬱血した乳首を、一気に飲み込んでしまった。
「うあぁぁぁぁぁっ!! 吸われる……ッ、吸われるぅぅぅぅぅぅぅッッッ!!」
ぼくが、夢にまで見た高貴な顔が、白痴めいた風に、頭を振って悶えている。………………感じて、いるんだ。
と、強く吸い上げた唇の中で、端末の拘束を解かれた乳首が、一瞬、大きく膨れ上がった。
「で……るぅぅぅぅぅッッッ………!!」
ディアナ様が、ぎゅっと、強く目を閉じて下唇を噛む。全身が、がくがくと震える。
次の瞬間、端末の中に、ディアナ様の中から吹き出した液体が、勢いよく飛沫いた。
ディアナ様の体の中には、コールドスリープのセーフティを完全にするためのナノマシンが大量に存在している。そのことを、ぼくは思い出した。ナノマシンのお陰で、ディアナ様の体にできた損傷は、ある程度のものまでは癒されてしまう。しかし、そのナノマシンが、このホワイトドールのもののようにある特性を秘めていたら。
それは、ホワイトドールがぼくの意思に感応したように、一種のサイ・コミュニケーターとなって、宿主の肉体に変化を及ぼす事もあるだろう。
「あああ………出てる……ッ。わたくし………もう、耐えられません………ッ!!」
ディアナ様が、何を思ったのかは分からない。でも、次に見開かれた時、ディアナ様の瞳は、淫蕩な色を湛えていた。
ぼくはその瞳に、テテスさんに感じた以上の官能を覚える。
……これが……これが、本当のディアナ様……!?
ディアナ様は、自らの手でスカートを引き裂くと、半ば分解された下着を、端末に向けて突き出した。
「早く! 早くなさい! わたくしの、女を剥き出しにッッッ!!」
「あああああああッッッ!!」
ぼくは絶叫を挙げた。例えようもない程、心が高ぶっているのがわかる。
手を伸ばすと、端末が意思通りに動いて、ディアナ様を包む一切の不純物を分解した。その際に、先端から白く濁った液体が迸った。
ディアナ様から漏れ出た液体を、模倣したのだろうか。……そんなこと、どうでもいい。
最早、隠すもの無く白日の元に晒された、ディアナ様のそこは、日の光を反射して光っている。尋常では無く、濡れているんだ。
滴り落ちた液体が、ホワイト・ドールのナノスキン装甲の隙間に入り込む。
「誰のものでも、いいからッッッ……! 挿れて……わたくしの、中にぃッ!!」
言われるまでも無いことで、ぼくは最初からそういうつもりだった。ディアナ様が落ちないように、体を保持する端末だけを残して、全ての端末が、ディアナ様の穴と言う穴に殺到する!
「あぐぅぅぅぅぅぅっっっ!!」
縒り合わされた、極太の端末が、ディアナ様の女性そのものを貫く。一気に奥までねじ込まれ、更に枝分かれした幾本かが、閉ざされた子宮の入り口に潜り込んでいく。
その感覚が全て、ぼくの股間に集中するのだ。ぼくは、初めて体験する女の人の中に、驚嘆した。こんなにも、強く締まる。枝分かれした襞が絡みついて、互いに分泌した液体が、膣の中を行き来することを容易にする。
それも、ディアナ様の中なのだ! ぼくはたちまち、限界に達した。
「あぁぁぁぁっっ!!」
射精した。どくどくと、ぼくのものからは普通では考えられないくらいの量で精液が出る。でも、ディアナ様に潜り込んでいる端末は、比べ物にならない程の量を吐き出したのだ。
「うあぁっ!? わたくしの、中がッ! 熱く、熱くぅぅぅぅッ!!」
射精される感覚に、腰を突き上げながら叫ぶディアナ様だが、端末はそれ以外の場所にも潜り込む。
開けられていた口に端末が入りこんで、そののたうつ本体を、豊かな胸の谷間に潜り込ませる。
驚いた事に、ディアナ様は自ら進んで、胸を使った奉仕を始めた。
掌で、乳房が押し付けられる度に、乳首は真っ白なミルクを吹いて端末を濡らしていく。食堂まで飲み込んでいるだろうに、ディアナ様は苦しい風も無く、舌先で端末を刺激してくるのだ。
膣を、端末から溢れ出た液体で溢杯にしながら、ディアナ様は何処か物足りなげな目をぼくに向けた。
「ぅん………んんんっっ、ふぅぅぅぅ……」
喉の奥まで咥えながら、片方の手を乳房から離して、ボリュームのある白い尻肉を自ら鷲づかみにした。そのことで、薄桃色の小さな窄まりが寛げられて、あられもない姿を晒す事になる。
ぼくは、ディアナ様の仰りたい事を理解した。ディアナ様の、口と、膣の二つの感覚を感じている今でさえ、幾度となく射精している。これでさらに、ディアナ様のお尻に挿れることになると……。
端末が新たに持ち上がって、縒り合わさる。それらは自ら液体を分泌して、ぬらぬらと照り輝いた。
中途半端に広げられた窄まりに、先端が突き刺さる。
「うぶぅっ!!」
ディアナ様の肢体が、激しく跳ねた。明らかに無理そうなサイズ。でも、ディアナ様のお尻は、驚くほどの柔軟さで端末を飲み込んでいく。
つるつるした腸管の感触が、新たに加わった。
「ああっ!!」
ぼくは、何度目か判らない射精をした。
同時に、ディアナ様の直腸でも端末が爆ぜているはずだ。膣と、口腔、腸管の三箇所に一時に液体を吐き出され、ディアナ様のおなかが見る見る膨らんでいく。
ぼくは反射的に、ディアナ様の女性に入りこんでいた端末を引き抜いた。
後には、ぽっかりと穴が開く。だらだらと、注ぎ込まれた液体を垂れ流しながら、開ききったそこは閉じようとしない。
やがて、ディアナ様が飲み込んでいた端末が引き出されると、離れていこうとするそれを、ディアナ様は掴み取った。そして、いとおしげに頬擦りをし、小さな口をいっぱいに広げて横っ腹にしゃぶりつく。
乳房に挟まれた端末は、ぬるぬるを全身から分泌しながら乳房の中を行き来し、枝分かれした一部が、極上の砂糖菓子にも似た乳肉を、燻製肉のように梱包している。
強烈に締め付けられる乳房から、噴水のように乳汁を噴出しながら、ディアナ様は自ら乳房を使った愛撫を怠る事が無い。
肛門を抉っている端末は、明らかに、ディアナ様に強烈な性感をもたらしている。腸壁を捻じ込みながら、開ききった膣襞を刺激する動きに、ディアナ様は既に幾度も達していた。ディアナ様がイク度に直腸が締まるから、ぼくにも判る。
ディアナ様は、快楽に蕩けた目をぼくに向けると、おそらく、誰も見た事が無いような淫らな笑顔を浮かべた。
「ロラン……。わたくしを、もっと……もっと辱めて………!」
それこそ、言われるまでもなかった。
ぼくは、太陽が沈み、月がホワイト・ドールを照らし出すまでの間、キエルお嬢さんを愛しつづけたのだ。
ぼくが、この時のキエルお嬢さんが、本当にディアナさまだったと知って、死ぬほどうろたえるのは、また別の話……(泣)